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ジャン・バティスト・レカイヨン醸造責任者が語ったシャンパン『ルイ・ロデレール』のすべて [来日したワイン生産者&関係者]

1776年創業のシャンパンメゾン『ルイ・ロデレール』

画像協力:エノテカ



初来日したルイ・ロデレール副社長兼栽培・醸造責任者のジャン・バティスト・レカイヨンさん
1989年入社、カリフォルニアや豪州での経験を経て1994年にシャンパーニュに戻り、1999年醸造責任者に就任。2006年からロデレールグループが生産する全ての総括を担っています。


同社はポルトガルの『ラモス・ピント』、シャンパンメゾンの『ドゥーツ』、ボルドーの『シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド』等を所有

ルイ・ロデレールの特徴
ルイ・ロデレ-ルは家族経営のメゾンで、現社長は7代目のフレデリック・ルゾーさんです。シャンパン業界で、ひときわ輝く存在感を誇示している同社の際立つポイントは・・・

栽培面
■ぶどうの75~80%が自社畑
現在240㌶(GC26㌶、PC87㌶)を所有。フィロキセラ禍で多くの人が畑を手放した1880年代に初めてヴェルズネイに100㌶(1845年)取得、世界恐慌でシャンパン業界が停滞していた1929年にも多くの畑を入手。これが自社畑拡大の基礎になっています。すべてのヴィンテージシャンパンは自社畑のぶどうでまかなわれています。自社畑だと細かいチェックができるので、より良いシャンパン造りのための大事な要因になります。
■ビオディナミ農法
取り組みは十数年前。すべての作業はカレンダーに添って実施。『クリスタル』と新アイテム『ブリュット・ナチュール・フィリップ・スタルクモデル』にはビオディナミのぶどうを使用
■マサル・セレクション
クリスタルを構成しているピノ・ノワールとシャルドネはルイ・ロデレールの〝メモリー〟を反映させた昔からの遺伝子的な多様性を備えた苗木を使用
マサル・セレクションはマス・セレクション、集団選抜と呼ばれるもので、畑から優秀な株を複数選び、補木を取って苗木をつくり、元の畑に戻す方法。代々引き継がれてきた自分の畑で、時間をかけて優秀な株を選抜し、それを苗木として使用するので、テロワールに即したものと言える。苗木はクローン苗が一般的になる前に植樹された畑の株でなければならない。株は例えば、果実の豊かさ、果皮の厚み、果粒の大きさ、香りや酸の強弱等、これらが混在することで、複雑味のある表現ができる(筆者記載)
■樹齢
ひとつの基準として25年超のぶどう樹はクリスタルに使用。クリスタル用のぶどう畑で25年以下の樹はブリュット・プルミエNVに使用。25年以下のワインは大樽で3年間熟成させ、リザーヴワインとして活用


醸造面
20世紀前半のワイン造り同様、できるだけ手を加えないスタイル
240㌶は410区画に分類、それぞれ単一畑と同じ捉え方で醸造を行っています。
■MLF
必要に応じて行うが、ヴィンテージシャンパンには行わない方針
近年では2010年、2011年には実施。2012年、2015年、2016年はノン・マロ
MLFをしない理由は「フレッシュな味わい、正確な味わいを残すため」とレカイヨンさん
■醸造施設
7ヶ所に施設(クリスタル、クリスタル・ロゼ、ブラン・ド・ブラン等)があり、個々に対応
■5気圧
シャンパンは通常6気圧ですが、ルイ・ロデレールのアイテムは5気圧(平均5.2気圧)。この方針は1930年頃からで、ブラン・ド・ブランは4気圧
2次発酵で添加する糖分は炭酸ガスを造るのが目的。結果的にアルコールがあがる。24gの糖分がすべてアルコールに変わった場合は約1.5%に相当。但し、この数値は2次発酵の温度、酵母によって若干変化する。シャンパンに必要なガス圧は20度で5気圧以上。 ◇4気圧(10度)=5.4気圧(20度) 補糖16g/Lあたりアルコール約1% アップ ◇5気圧(10度)=6.8気圧(20度) 補糖20g/Lあたりアルコール約1.2%アップ ◇6気圧(10度)=8.2気圧(20 度) 補糖24g/Lあたりアルコール約1.5%アップ (筆者記載)



(左から)
メゾンの顔『ブリュット・プルミエNV』、『ブリュット・ナチュール・フィリップ・スタルクモデル2009』、『ブリュット・ヴィンテージ・ロゼ2011』、『ブリュット・ヴィンテージ2009』、『ブラン・ド・ブラン ヴィンテージ2010』、『クリスタル2009』

ブレンドの妙 ブリュット・プルミエNV
PN40% 、CH40% 、M20%(5%くらい前後
ベースワイン(2012年/14GCと37PCの51区画)70%、リザーヴワイン(7VT)30%
65%前後が自社畑で残りは毎年同じ契約農家からの買付ぶどう。現行のプルミエはベースワインが力強かったので、リザーヴワインは優しいタッチのものを選択

レカイヨン:看板商品であり、ベースとなるヴィンテージの味を感じるのでマルチヴィンテージではなく、NVと呼びたい。最初に清涼感、その後、舌の中ほどから付け根にかけてソフトでベルベットのような滑らかな感触、舌の付け根に塩味。
ドザージュ量は9g、15年前は12~ 13g/ L。減量の理由は気候の変化と栽培条件(15年前から化学肥料、除草剤の不使用)で、ぶどうの熟度によるもの。ドザージュの役割は酸味と甘味のバランスを保つことであり、このシャンパンはMLFをしていないので、酸が高い。ゆえにドザージュは多め(9g/L)。MLFを行って酸味を下げた状態であればドザージュ量は4gで十分。リリースしたばかりのブリュット・プルミエはリザーヴワインの味が顕著なので、3~4年保存して、熟成のポテンシャルが出てきた頃に飲むとベースヴィンテージ(2012年)が良くわかる。1998年からアプリで詳細情報を公開中

感性に訴えかけるブリュット・ナチュール・フィリップ・スタルクモデル2009

「ノン・ドゼを造ろうと思ってトライしたのではない。ぶどうが熟したので何も手を加えないで、ミニマリズム(極限まで無駄を省く)で行こうと決め、完成したのがこのキュヴェ」とレカイヨンさん


フレデリック・ルゾー社長とフィリップ・スタルクさん 画像協力:エノテカ

PN55%、CH20%、M25%
ヴァレ・ド・ラ・マルヌのキュミエールのぶどうはビオディナミで栽培。ぶどうの特徴を最大限に生かすため、3品種を同時に収穫。発酵はステンレスタンク70%、木樽30%、5気圧弱を目安に熟成させ、ノン・ドゼで生産。
[バー]追加情報:自社畑のキュミエールではM(ムニエ)を栽培しています。ただ、極小区画なので、PNとCHを全面に出しています。

レカイヨン:フィリップ・スタルクとのコラボは、今までにないものを作りたいとの思いがあったからそれを実願するために、彼のインスピレーションを生かして、極限までそぎ落としたシャンパンを造った。2006年、2009年に続く、次のヴィンテージは2012年。粘土石灰質土壌由来のまるみがあり、早い段階から塩味を感じる。口中では幅広で密度があり、濃厚で凝縮感がある。単一畑で品種が固定しているので、ヴィンテージで個性が異なる。2006年は暑かったので力強さ、ふくらみがあり、2009年は暑かったものの、2006年程ではなかったのでシャープでエレガント



ビオデイナミへの取り組みは十数年前から


ノン・ドゼのきっかけは「10年前に自然農法の提唱者福岡正信氏の思想に影響されたから」とレカイヨンさん。福岡さんは2008年に他界なさいましたが、アンセルム・セロスも福岡シンパ

独自製法のブリュット・ロゼ2011

PN63%、CH37%
粘土石灰質土壌(キュミエール)のピノ・ノワールと石灰質土壌のシャルドネを使用
2011年は難しいヴィンテージ、生産したのはロゼとブラン・ド・ブランの2アイテムだけ
ピノ・ノワールを低温(4度)で7日~10日間マセレーション(セニエ法)。色を抽出したピノにシャルドネのジュースをブレンドしてアルコール発酵。木製発酵槽22%

レカイヨン:ピノ・ノワールは朝方収穫すると朝露がついてしまうので、午後に行う。南向き斜面で収穫したピノは酸味が低いので、フレッシュなシャルドネを加えて発酵させることで、調和がとれた味わいになり、瓶内熟成をした時にその特徴が出てくる。香りはブラッドオレンジ、酸味の印象が強いので、黒いグラスで試すとロゼではなく、フレッシュな白ワインだと思うはず。発酵に木樽を使うことで、スモーキーなニュアンスが出てくる。クリスタル・ロゼも同製法。違いはぶどうの出所で、ピノはアイ、シャルドネはアヴィズとメニル・シュル・オジェ




クラシックなスタイルのヴィンテージ2009
PN70%、CH30%
ピノ・ノワールは1845年に初めて購入したヴェルズネイの畑、北東向き斜面、冷涼エリアなので新鮮なぶどうが収穫できる。ぶどうがフレッシュなので木製発酵槽30%を使い、まろやかさを表現

レカイヨン:クラシックなシャンパンの味わい。マリアージュのヒントとして最初にピノベース、最後にシャルドネベースにするのがロデレールスタイル。フルコースで合わせるなら、最初にロゼ、次にブリュット・プルミエ、ヴィンテージ、クリスタル、そしてブラン・ド・ブランを最後にすることで、口中をリフレッシュさせることができる。このシャンパンは粘土質と石灰質土壌から構成されているので、味わいにも最初に粘土、後から石灰質のニュアンス

4気圧のブラン・ド・ブラン2011
CH100%
アヴィズ(地下水が少ない乾燥した土壌)の4区画のぶどうを使用。グラン・クリュになればなるほど石灰分が多く、土壌の特徴としてぶどうはゆっくり熟す。シャルドネは香りや果実味をより多く出すために少しだけ遅らせて収穫。発酵はステンレスタンク80%、木製発酵樽20%

レカイヨン:ルイ・ロデレールのアイテムのなかで一番ガス圧が低いシャンパン。泡が前面に出るのではなく、最初にワインの塩味を感じ、後から、泡を感じるように設計。ぶどうの熟度が高いのでMLFはしていない。石灰質土壌のシャルドネは鋭角的な味わいで、舌に直接働きかけてくるような広がりがある。2010年ヴィンテージは難しい年だったが、アヴィズのぶどうは熟度も高く、良いぶどうが収穫できた。

王者の風格クリスタル2009
PN60%、CH40%
1876年ロシア皇帝アレクサンドラ2世の要請により誕生したシャンパン。石灰土壌でPNを栽培すると低収量。結果としては香り・味わいに凝縮感が出る。PNの畑はヴェルズイ、ヴェルジ、ボーモン・シュル・ヴェスル、アイの4つのGC。すべて丘陵の中腹。クリスタルの畑は全部で45区画、実際に使うのは32区画。ぶどう樹は25~82年で平均樹齢42年。ブレンドを決めるのは収穫年の冬で1か月を要する。ピュア、チョーキー、プレサイズ(寸分の違いもない)であることがスタイルの基本。今後リリースするヴィンテージは2008年、2012年、2013年、2014年、2015年 2016年

レカイヨン:2009年はリリースの順序を入れ替えたヴィンテージで、これはメゾン初のこと。クリスタル2009は2016年に発売したが、2008年はまだ熟成中。ドザージュ量を1g減らして8g/Lにしたのも初めて。今までのクリスタルのなかで一番ドザージュ量が少ない。
クリスタルはビオディナミに転換中で2020年には100%ビオディナミのぶどうで生産する予定。ドザージュ量を下げたのは熟度が高かったことに加え、ビオディナミ農法だと、味わいに力強さと奥行きが出るので、通常年より1g下げることに成功した。
若いので奥行きはまだ出ていないが、石灰土壌由来のニュアンス、熟成のポテンシャルは感じるはず。飲む2~3時間前に抜栓を!


2008年と2009年のリリースを入れ替えた理由
順番を変えようと考え始めたのは3~4年前。2008年はタイトで、1988年(PN40%、CH60%)と似ている。通常では考えられないくらいポテンシャルがあり、熟成期間が長い。粘土質のシャンパンなら、そのままの順番で出したが、石灰質のシャンパンは熟成がゆっくり進むので決断した。
クリスタルは全部瓶詰めするのでななく、一部大樽でキープしている。樽は瓶より早く熟成するので、将来的に瓶詰めされたクリスタルの変化が予想できる。


シャンパン講座でマスタークラスセミナーを再現

2017年最初の講座で、ルイ・ロデレ-ルの6アイテムを再検証

左から
#1:ルイ・ロデレール ブリュット・プルミエNV
生産者: ルイ・ロデレール
ぶどう品種:PN40%、CH40%、M20%
ドザージュ:9g/L
価格: 6,800円(税別)

#2:ルイ・ロデレール ブリュット・ナチュール・フィリップ・スタルクモデル2009
生産者:ルイ・ロデレール
ぶどう品種: PN55%、CH20%、M25%
ドザージュ: 0g/L
価格: 15,000円(税別)

#3:ルイ・ロデレール ブリュット・ヴィンテージ・ロゼ2011
生産者:ルイ・ロデレール
ぶどう品種:PN63%、CH37%
ドザージュ:9g/L
価格: 10,000 円(税別)

#4:ルイ・ロデレール ブリュット・ヴィンテージ2009
生産者: ルイ・ロデレール
ぶどう品種:PN70%、CH30%
ドザージュ:9g/L
価格: 10,000円(税別)

#5:ルイ・ロデレール ブラン・ド・ブラン・ヴィンテージ2009
生産者:ルイ・ロデレール
ぶどう品種:CH100%
ドザージュ:9g/L
価格: 15,000円(税別)

#6:ルイ・ロデレール クリスタル2009
生産者:ルイ・ロデレール
ぶどう品種:PN60%、CH40%
ドザージュ:8g/L
価格:32,000円(税別)


石灰質土壌由来の〝凛〟としたスタイル、エレガント!
ブラン・ド・ブランは2009年ヴィンテージ(セミナーは2010年


シャンパンの状態も完璧、充実した2時間になりました!




ドザージュ後の瓶内熟成に興味を持っていたので、ドザージュの有無で、瓶内熟成はどのように変化するか、質問させていただきました。

レカイヨン:ドザージュすると瓶内で抗酸化(酸化を防ぐ)の働きをしてくれるので、ノン・ドゼのものは、ドザージュをしているものより、熟成のポテンシャルは短いかも知れません。ちょうど1週間前に2006年を試す機会がありました。酸化はしてなくて、健全な状態で熟成していました。(1)原料ぶどうがビオディナミで栽培されている。(2)発酵にオーク樽を使っているので木樽からタンニンが溶け込むことで、それが抗酸化の働きをしている。(3)酸が高い。
これら3つの要素で、ドザージュをしなくても、ポテンシャルはまだまだあるのではないかと思っています。

レカイヨンさんの解説を伺いながら、私は彼の優秀さに通じるある方を連想していました。
昨年3月に逝去なさったシャトー・マルゴーの総支配人ポール・ポンタリエさんです。ポンタリエさんはパリ国立農業大学に入学し、その後、モンペリエ国立高等農業大学でぶどう栽培&ワイン醸造を習得。シャトー・マルゴーで30年以上にわたり、総支配人兼最高醸造責任者として活躍なさいました。

輸入元エノテカのサイトにあった 「フランス国立農業学院で醸造と栽培の両部門を首席で卒業」というレカイヨンさんの紹介文を見て、その共通性にひとり納得。
天才醸造家とお目にかかり、お話を伺えたことはとても光栄でした!

エノテカ様にはマスタークラスセミナーでお世話になりました。またNHK文化センターのシャンパン講座でもデータ等のサポートをいただき、感謝しております、ありがとうございました!!


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ネオ・アッキー

fumikoさんこんばんは。
一番最初に、Reims(ランス)に訪れた時、ルイ・ロデレール社のメゾンに行きました。(ルイ・ロデレール社はメゾンの見学は一般は不可なので出来ませんでしたが・・・)
クリスタル1999年物2本と、2000年物1本保有していますが、まだ飲んだことはありません。
飲んだことのある方の話では、とても泡が細かく、素晴らしい味わいとのことです。
ルイ・ロデレール ブリュット・ヴィンテージ・ロゼ 2007年物は何回か飲んでいますが、シャンパンでは珍しい、セニエ法で造られたロゼのシャンパーニュはとてもエレガントで、味わい深いシャンパーニュだったと記憶しております。
by ネオ・アッキー (2017-02-02 00:34) 

fumiko

ネオ・アッキーさん、お返事が遅れてすみません。
クリスタルの1999と2000を保存なさっているのですね。
一年前に1996を開けましたが、これは10年後でも良いと思いました。なぜなら96は酸がしっかりしているVTで、特にクリスタルはMLFをしていないので、さらに酸が生き生きしているからです。
ネオ・アッキーさんがお持ちの両VT(良年のヴィンテージ)はセラーでもう少し寝かせておいて良いと思います。
ルイ・ロデレールのシャンパンの口当たりの良さは、ブログに書いた通りです。同メゾンのロゼはヴィンテージものだけで、NVはありません。それだけこだわりがあるのだと思います。造りもそうで、ブレンドでもセニエでもないルイ・ロデレールスタイルです。
ワインのことをお勉強なさっているようなので、クリスタルを飲む時は、フルートグラスでなく、白ワイングラスで飲むことをお薦めします。
コメント、ありがとうございました!

by fumiko (2017-02-05 21:35) 

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